研究課題/領域番号 |
20590349
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
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研究分担者 |
傳田 阿由美 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90110858)
笹平 智則 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90405374)
大森 斉 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80213875)
藤井 澄 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (60284189)
バワール ウジャール 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50433339)
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キーワード | アンギオテンシン / キマーゼ / CD10 / 大腸癌 / 転移 |
研究概要 |
大腸癌におけるアンギオテンシン(AT)系の活性化とその肝転移への関与を検討した。ヒト大腸癌細胞株HT29では、アンギオテンシン受容体(AR1)の発現が認められたが、アンギオテンシノーゲン(ATG)の発現は認められなかった。HT29細胞をATIIで処理すると、濃度依存性に細胞増殖及び4型コラーゲンに対する浸潤にATIIによる促進が認められた。次に、ATGによりHT29細胞を処理すると、ATIIと同様に、細胞増殖及び4型コラーゲン浸潤能の促進が認められ、HT29細胞にAT系の活性化機構が存在することが示唆された。HT29細胞をATG処理すると、経時的にATI及びATIIが生成することがELISAにより確認された。しかし、CD10阻害剤(thiorphan)処理でATI・IIともに生成が阻害され、キマーゼ阻害剤ではATIの生成は保持されATIIの生成は阻害された。これに対しACE阻害剤ではATI・IIの生成に抑制は認められなかった。これらの結果から、HT29細胞ではCD10とキマーゼによりATGからATIIが生成されると考えられた。BALB/cヌードマウスをATG・アンチセンスを処理し肝におけるAGT産生を抑制した上で、HT29細胞を脾注すると、肝転移の形成は転移巣の数・大きさとも有意に抑制された。これらの結果から、HT29大腸癌細胞はCD10とキマーゼによるAT活性化機構を有することで、その肝転移能が促進されていることが示唆された。ヒト大腸癌におけるキマーゼの発現を免疫染色により検討したところ、原発巣ではDukes'B:22%、Dukes'C:38%、Dukes'D(肝転移・リンパ節転移):67%に見られた。Dukes'D肝転移症例でキマーゼ・CD10共陽性率を転移巣別に比較すると、原発巣58%、リンパ節転移巣17%、肝転移巣83%と肝転移巣で有意に共陽性率が高かった(P=0.0033)。
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