研究概要 |
近年,蛋白質をコードしないnon-coding RNAであるmiRNAか,蛋白質の翻訳抑制に働いていることが明らかとなり,post-transcriptionalな発現制御機構として注目を浴びている.miRNAは,mRNAと完全相補鎖を形成する場合にはmRNAの分解に働き,一部ミスマッチが認められる場合には翻訳抑制が起きる.miRNAは,発生や細胞分化の研究分野で精力的に解析が進んでおり,がん関連遺伝子の発現制御に関わるmiRNAも次々に特定されている.我々は,骨・軟骨悪性腫瘍においてmiRNAの発現プロファイルを作成し,がん関連遺伝子の発現制御に関わるmiRNAを特定する.さらに,個々のmiRNAの細胞生物学的意義を検証し,骨・軟骨悪性腫瘍の発生・進展に関する生物学的意義を明らかにする.本年度は以下の研究成果を得た. 1.骨肉腫培養細胞株8株と正常骨芽初代細胞2株のmiRNAについて,microarrayおよびreal-timePCRを応用して解析を行い,18個のmiRNAの発現上昇,8個のmiRNA発現低下みた. 2.miRNA-127は骨肉腫培養細胞株で共通して発現低下の認められるmiRNAであった. 3.miRNA-127の発現低下はBLC6の発現と逆相関がみられた. 4.miRNA-127の過剰発現により,BCL6の発現抑制が確認された. 5.BCL6の過剰発現のみられた骨肉腫患者は予後不良であった. miRN-127の発現低下は骨肉腫の発生進展の過程において何らかの役割を果たしている可能性がある.次年度以降は,miRNA-127のエピジェネティックな発現制御機構を中心に解析を行う.
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