研究概要 |
近年,蛋白質をコードしないnon-coding RNAであるmiRNAが,蛋白質の翻訳抑制に働いていることが明らかとなり,post-transcriptionalな発現制御機構として注目を浴びている.miRNAは,mRNAと完全相補鎖を形成する場合にはmRNAの分解に働き,一部ミスマッチが認められる場合には翻訳抑制が起きる.miRNAは,発生や細胞分化の研究分野で精力的に解析が進んでおり,がん関連遺伝子の発現制御に関わるmiRNAも次々に特定されている.我々は,骨・軟骨悪性腫瘍においてmiRNAの発現プロファイルを作成し,がん関連遺伝子の発現制御に関わるmiRNAを特定する.さらに,個々のmiRNAの細胞生物学的意義を検証し,骨・軟骨悪性腫瘍の発生・進展に関する生物学的意義を明らかにする. 本年度は昨年度の解析結果を経て,miR-127の標的であるBCL6がそのfamilyであるNACC1の機能制御に関与している事を明らかにしてので,NACC1の解析を中心に行った. 1. NACC1の発現抑制は,骨肉腫細胞株の浸潤・運動能を低下させた. 2. NACC1の発現抑制は,骨肉腫細胞株の増殖能を低下させた. 3. NACC1はピストン脱アセチル化酵素と相互作用をする事が明らかとなった. NACC1の活性制御には翻訳後修飾が明らかとなり,骨肉腫の発生・進展過程にはmiRNAの異常や蛋白の翻訳後修飾によるゲノム非依存性の機構が存在することが明らかとなった.
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