研究概要 |
上皮増殖因子受容体関連蛋白質と下流因子の検索:山梨大学との研究で収集した肺癌140例,骨軟部肉腫120例でEGFRの異常とカスケードの下流因子(Akt,mTOR,S6K,rS6蛋白)の特異的活性化の解析を行った。a)肺癌におけるEGFR蛋白質の過剰発現,遺伝子増幅,変異の関連:EGFR蛋白質の過剰発現、活性化はいずれも約37%に認められたが、小細胞癌では7%であり、その関与は低かった。EGFRの活性化例の55%にAkt-mTOR系の活性化を伴い、EGFR/Akt/mTOR,/rS6の全体の構成的活性化は非小細胞癌の11%に見られた。特に腺癌(AC)では90%に、扁平上皮癌(SCC)では90%にmTORの活性化を認めたが、いずれもその60%が下流のS6K/rS6の活性化を伴っていた。EGFRの遺伝子変異例は24%に見られ、高頻度にEGFRの活性化を伴い、50%の症例がAkt/mTOR/rS6全体の活性化を伴っていた。この傾向はSCCでも同様であった。遺伝子変異例の22%に増幅を伴っていたが、下流因子の活性化の特異性は認めなかった。Aktの活性化は肺癌全体でリンパ節転移と相関し、組織型別ではSCCではmTOR,ACではrS6の活性化例で転移率が高かった(2009年,日本癌学会発表,論文投稿中)。b)骨軟部肉腫:骨軟部肉腫ではEGFRの下流分子のAktが55%、mTORは61%で活性化され,特にmTORは神経系,横紋筋腫瘍の他,上皮性形態を示す腫瘍特異的に下流のS6K/4E-BP1も含めた系全体の活性化が見られ,これらの腫瘍の分化,形態形成への関与が示唆された(2009年、日本病理学会発表、Mod. Pathol. 2009).
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