Helicobactor pylori(以下ピロリ菌)は、胃への感染により胃炎や胃潰瘍が惹起され、さらに胃癌やMALTリンパ腫を発症させると考えられている。われわれは免疫担当細胞欠如マウスを用いて、1)小腸のパイエル板がこのピロリ菌に対する細胞性免疫能の獲得に必須であること、2)通常の胃で観察されるhelical型ピロリ菌ではなくcoccoid型ピロリ菌がパイエル板で樹状細胞に貪食されること、を報告した(Proc Natl Acad Sci USA. 104:8971-6. 2007)。しかし、ヒトにおいて実際に小腸パイエル板でcoccoid型ピロリ菌が感染し、さらに樹状細胞に貪食されることで、細胞性免疫が獲得されるか否かについてはいまだ不明である。そこで初年度では、血清学的に同定されたピロリ菌感染者(12症例)および非感染者(8症例)より、小児(4症例)・成人(16症例)の臨床検体(胃、小腸、リンパ節、脾臓)を用いて、パイエル板、リンパ節、脾臓におけるピロリ菌の局在の有無とその形態を解析した。その結果、抗ピロリ菌抗体(Biomedia社およびDAKO社)を用いた免疫染色にて、ピロリ菌感染者の4症例にてパイエル板内に菌体の陽性所見を得た。現在、電子顕微鏡により、subepithelial domeおよび濾胞間領域を重点的に観察している。またピロリ菌特異的rRNA配列を用いたin situ hybridizationおよびin situ RT-PCR法(coccoid型でも発現しているrRNA領域と発現していないrRNA領域でhelical型と区別可能)によるcoccoid型菌体の検出の基礎的検討を感染マウス組織にて検討し、その検出に成功した。ITP症例の脾臓の検討では、ごく少数ながら菌体様の構造物に陽性所見を得たが、電子顕微鏡やin situ RT-PCR法によりさらなる確証を得るべく検討している。
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