研究課題
ピロリ菌は、胃への感染により胃炎や潰瘍が惹起され、さらに癌やリンパ腫を発症させる。われわれは免疫担当細胞欠如マウスを用いて、小腸のパイエル板がこのピロリ菌に対する細胞性免疫能の獲得に必須であり、helical型ではなくcoccoid型ピロリ菌がパイエル板で樹状細胞に貪食されることを報告した。しかし、ヒトでもパイエル板でcoccoid型ピロリ菌が感染し、樹状細胞に貪食されることで、細胞性免疫が獲得されるどうかは不明である。そこで、血清学的に同定されたピロリ菌感染者(18症例)および非感染者(12症例)より、小児(6症例)・成人(24症例)の臨床検体(胃、小腸、リンパ節、脾臓)を用いて、パイエル板、リンパ節、脾臓におけるピロリ菌の局在の有無とその形態を解析した。その結果、抗ピロリ菌抗体(Biomedia社およびDAKO社)を用いた免疫染色にて、ピロリ菌感染者の5症例にてパイエル板内に菌体の陽性所見を得た。また電子顕微鏡により、subepithelial domeおよび濾胞間領域に菌体を観察した。またピロリ菌特異的rRNA配列を用いたcoccoid型菌体の検出を感染マウス組織にて検討し、その検出に成功し、上記のsubepithelial domeおよび濾胞間領域にシグナルを検出した。ITPおよびシェーグレン症候群症例の脾臓の検討では、2症例において菌体様の構造物に免疫染色にて陽性所見を得たが、電子顕微鏡やin situ RT-PCR法では菌体は見出せなかった。これらの結果は、ヒトにおいての小腸のパイエル板がこのピロリ菌に対する細胞性免疫能の獲得に重要であり、helical型ではなくcoccoid型ピロリ菌がパイエル板で樹状細胞に貪食される可能性を示す。
すべて 2010
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Cancer Science
巻: 101 ページ: 1731-1737