研究概要 |
【目的】肺神経内分泌腫瘍の正確な診断と治療のために、神経内分泌分化を示す肺癌の遺伝子、蛋白発現プロファイルを解析し、病理学的疾患単位の再検討、診断、治療指標に有用な指標の解明を行う。 【方法】肺癌切除検体を用いてAffymetrix Genechip HG U133 Aによる網羅的遺伝子発現を検索、腺癌(n=100)、神経内分泌癌(NEC7)で発現レベルの異なる遺伝子を抽出。選択遺伝子についてHGNEC (LCNEC 12,SCLC 5), LGNEC (Carcinoid 3)、NE形態のみを示すNSCLC (NE-mo 12),NE形質陽性NSCLC (NE-ph2), NSCLC (105)におけるmRNA levelを定量RT-PCR、QuantiGene plex (QGP)で、蛋白発現を免疫染色で検討した。特に有用なマーカーとして期待されるASCL1などの遺伝子発現機構を解明するために、遺伝子プロモーター領域のメチル化状態を検索した。 【結果】Genechip発現解析では、NECでASCL1,KI67,MCM10,DLL3等の発現が亢進、PPARγ,SFTPC等が低下していた。mRNA発現解析では、NECとNSCLCは異なる発現Profile、さらにHGNECとLGNECは異なるprofileを示し、発生機序が異なる可能性が示唆されたが、HGNECであるLCNEC,SCLCは区別することができなかった。NE-mo,NE-phはNEマーカーの発現は低く、NSCLCと類似したProfileであったが、細胞増殖能は高く、通常のNSCLCとHGNECの中間的な結果を示し、高悪性度であった。また、ASCL1は免疫染色、定量RT-PCRの結果はよく相関し、臨床的に予後不良な症例で高発現していた。メチル化状態は有意な差は認められなかった。 【結論】病理形態学的特徴は遺伝子、蛋白発現の特徴を反映しており、組織型相互の関係が解明された。NECの有用な診断指標としてASCL1などが示唆された。ASCL1の発現機序、発がん機構の解明にはさらなる検討が必要である。
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