研究概要 |
乳癌術後自然経過を明らかにする目的で、これまでに抽出した、術後無補助療法群約700例について、ER-β、ER-α,PgR,HER2等、計9種の免疫染色、評価を完了した。ER-β発現状況による無再発生存率、全生存率の比較を行った。また、腫瘍径、リンパ節転移状況、核異型度、ER-α,PgR,HER2発現状況等、確立された予後予測因子を含めた多変量解析を行い、ER-βの独立した予後予測性を検討した。 無補助療法群では、ER-β1発現状況による予後の差が見られなかった。Tamoxifen単独補助療法群での、ER-β1陽性癌は陰性癌に比し有意に予後良好との結果は、自然経過によるものでなく、tamoxifenの影響を示すものであることが明らかとなった。 Tamoxifenの具体的影響を明らかにするために、ER-β1陽性癌、陰性癌、各々について、tamoxifen治療の有無による予後を比較したところ、tamoxifenはER-β1陽性癌の予後改善に効くのではなく、ER-β1陰性癌の予後を悪化させる方向に働いていることがわかった。 乳癌研究における必須項目である、ER-α,PgRについての結果も付随して得られているが、tamoxifen療法の根幹をなす欧米データと一致する結果は得られなかった。 乳癌術後自然経過が明らかとなった。TamoxifenがER-β1陰性癌の予後を悪化させるとの結果は予想外であったが、ER-α,PgRについての結果が欧米と一致しないことも予想外であった。今後、人種差を考慮した研究が必要と思われる。
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