研究概要 |
種々の癌においてintegrin β4は, MetやerbB2などのreceptor tyrosine kinase(RTK)の活性増強を介して, 腫瘍の進展を促進する重要な役割を担っている. 本研究では, integrin β4がヒト前立腺癌においても, 進展を促進するように働いていると予想し, その仮説を検討する目的で, 1)ヒト前立腺癌組織における, integrin β4およびMetやerbB2などの既知の関連分子や新規の関連分子の発現と臨床病理学的な検討, 2)ヒト前立腺癌培養細胞を用いた, 前立腺癌においてintegrin β4が関与するメカニズムの研究を行う. 平成20年度は, 目的1)の検討を行うために, 研究実施計画に基づいて約30症例の凍結標本採取を,標本の採取に同意された患者さんの手術検体から行った. これらの検体を病理組織学的に検討したところ, 臨床病期分類(TNM分類)では, pT2(24例)およびpT3a(6例)の症例であり, Gleason分類では, スコア7(20例), 8(5例)および9以上(5例)で, またWHO分類では, グレード3(14例), 4(10例), 5(4例)および6(2例)で構成されていた. 採取した前立腺癌凍結標本のうち, 2例についてDNA microarrayにて検索したところ, 癌部においてintegrin β4およびMetやerbB2などのRTKの発現を確認した. 詳細な解析は平成21年度に行う予定である, また4例行ったin situ hybridizationにおいても, 2例にこれらの発現を認めた. 免疫組織学的に検討したところ, integrin β4の発現を約30%で認め, MetやerbB2の発現も確認したことから, 新規分子も含めて, integrin β4と共発現する分子を平成21年度も検討する. 目的2)の検討を行うため, integrin β4のshort hairpin部分に対するRNA interference(RNAi)を, ヒト前立腺癌培養細胞DU145に行ったところ, TRAILに対するアポトーシスが増強することを確認し, 第67回日本癌学会で報告した. Integrin β4に対するRNAiが及ぼす影響については平成21年度も引き続き検討する.
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