研究概要 |
腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けを行うために腫瘍幹細胞のマーカーを同定する必要がある。前年度に引き続き、腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationをソートし、その画分に高発現する遺伝子を調べることで腫瘍幹細胞マーカーを検討した。前年度まで、肺癌や乳癌で検討したCDCP1について子宮体癌で調べたところ、これまで得られた傾向と異なり、発現の高い症例ほど予後がいいことがわかった。腫瘍の種類により同じ遺伝子でも動態が異なることが明らかとなった。また、肺腺癌のside populationで高発現する核内レセプター蛋白であるNROB1の発現意義を検討した。NROB1の発現を低下させることで腫瘍形成能、間質への浸潤能、抗癌剤に対する耐性が低下することがわかった。NROB1を高発現する症例は低発現の症例に比較して予後が悪く、統計学的にNROB1高発現は独立した予後因子となっていた。一方、食道癌で腫瘍細胞と間質細胞が接する部分でpodoplaninが高発現することを見出した。食道癌細胞株においてpodoplaninをノックダウンすると腫瘍形成能が低下し、podoplanin高発現群は低発現症例よりも予後不良であることがわかった。現在のところ、腫瘍幹細胞マーカーの候補として検討した遺伝子はCDCP1,NROB1,podoplanin,前年度に検討したCD55,Hsp105の5種類で、腫瘍としては肺癌、乳癌、子宮体癌を検討材料としている。Side populationで高発現する遺伝子を他にも単離しており、これらを多角的に組み合わせることで腫瘍幹細胞の存在意義、予後に及ぼす影響を次年度解析する計画をしている。
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