研究概要 |
腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けを行うためには腫瘍幹細胞のマーカーを同定する必要がある。前年度までは、腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationについて主に解析した。今年度は、それに加えて、新たに毒物としてよく知られているアルデヒドの代謝において、重要な役割を果たすことがわかっているアルデヒド脱水素酵素(ALDH1)陽性画分、さらに細胞にとって毒性をもつ活性酸素除去能力の高い画分についての解析を行った。これらのマーカーを高発現する画分をソートし、腫瘍幹細胞マーカーの意義を検討したところ、in vitro,in vivoにおける腫瘍形成能が高く、抗がん剤に対する抵抗性や間質に対する浸潤能も高かった。また、実際に臨床検体を用いて検討したところ、ALDH1陽性細胞が多い症例ほど再発しやすく、リンパ節への転移も高頻度にみられ、予後不良であることが婦人科検体においてわかった。さらに、リンパ腫検体においても、活性酸素を除去する能力が高いほど予後不良であることがわかった。前年度まで蓄積したside-populationをマーカーとした腫瘍幹細胞の解析データに、さらに新たなマーカーとしてALDH1,活性酸素という切り口によるデータを追加し、腫瘍幹細胞の動態を多角的に解析した。また、ALDH1を高発現する画分を特徴づけるマーカーについても検索し、蛋白分解酵素の一種やサイトカインの一種などを単離した。
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