研究概要 |
反応性濾胞とその腫瘍性counterpartである濾胞性リンパ腫の遺伝子発現制御の特徴を、small RNA(microRNA, snoRNA)の働く転写後翻訳プロセス制御の視点から総合的に解析し洗い出すことを目的とした。出発点としてマイクロダイセクション法を用いた凍結病理組織切片からの細胞集団の純化抽出とそれに続くRNAプロファイリングを行い、key分子としてのmiRNA,snoRNA候補を絞った。結果として反応性濾胞で発現が低下(濾胞性リンパ腫で発現が相対的に上昇)していたmiRNAはmiR-146a,miR-193b,miR-379であり、逆に反応性濾胞で発現が高く、腫瘍性濾胞で低下していたmiRはmiR-26a,miR-16,miR-15aであった。次にこの結果から、ヒト扁桃組織を材料としてセルソーターによりCD38+,IgD一細胞集団とCD38-,IgD+細胞集団、さらに濾胞性リンパ腫細胞株FL-18のmRNAを抽出し、real-timePCRを実施して各細胞集団間のmiR発現量をU6による補正を加えて比較解析したところ(計2症例について解析)、miR-146a,miR-193b,miR-26aに関してmiRプロファイリングの結果を良好な再現性をもって反映していることが明らかとなった。そこで、複数の個別下流分子の同定作業に入る前段階の基盤実験として、また今後の研究進展のためのユーティリティを考慮して当初申請書に記載した計画を変更し、これらのmiRの腫瘍化における機能性を解析するためにマウスにおけるアナローグmiRをマウスゲノムDNAを材料としてクローニングを行い、得られたmu-miR-146aおよびmu-miR-193bについてB細胞特異的発現を可能とするベクターに組み込んだコンストラクトを作成した。これを用いてC57BL6マウスへのトランスジーンを計画し、現在、理化学研究所CDBユニットとの共同研究のもと,マウスへのトランスジーンを2009年3月より実施中である。これらマウスにおける当該miRのinvivoでのB細胞における機能の解析や病態を次段階として計画している。また、miR-26aについてはノックアウトマウスの作成を考案中である。
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