1) 皮膚腫瘍のp53過剰発現と53BP1発現の相関:正常表皮と脂漏性角化症の53BP1発現は安定型であり、かつp53は陰性であった。日光角化症では基底側の異型細胞の核に53BP1フォーカス(DNA損傷応答:DDR型)とp53との共発現がみられ、共発現細胞に増殖マーカーKi-67は陰性であった。一方、扁平上皮癌での53BP1発現は異常型であり、かつp53は過剰発現がみられたが、両者は必ずしも共発現しなかった。さらに538P1異常型発現はKi-67陽性細胞にも認めた。これらの結果は、皮膚がん化過程では前がん病変から内因性DDRはみられるが正常に機能していて、浸潤がんではDDRが異常でありゲノム不安定性状態を示唆する。 2) 子宮頚部腫瘍における53BP1発現の特徴:子宮頚部腫瘍80例を対象に、53BP1発現を解析した。高DDR型発現は、正常、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成および浸潤がんでそれぞれ1.2、10.2、19.1、37.5および49.8%であり、腫瘍進展に伴い高DDR型発現が亢進する傾向には有意な関連がみられた。53BP1とKi-67の二重染色では、腫瘍進展に伴い高DDR型が増殖細胞で高率に観察され、がん細胞ではDNA修復機構の破綻があることが示唆された。さらにHPV ISH法では、腫瘍進展に伴いDNAの宿主ゲノムへの組み込みと高DDR型発現が亢進する傾向には有意な関連がみられた。蛍光免疫染色による53BP1発現型解析は、子宮頚部腫瘍におけるゲノム不安定性レベルを推定する指標となり、新規腫瘍組織マーカーとしての可能性がある。
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