自然発症性DNA二重鎖切断(DSBs)の存在はゲノム不安定性(GIN)を特徴づける現象である。多くの腫瘍化過程には GINが重要で、特に生物学的悪性度と関連する。本研究では、GINの細胞生物学的指標としてのP53-binding protein 1 (53BP1)核内フォーカス(NF)形成を蛍光免疫染色により解析し、普遍的腫瘍組織マーカーとしての意義を検討した。その結果、1)甲状腺癌組織では53BP1 NF数の増加と異常発現がみられ、GINの関与が示唆されること、2)皮膚癌化過程では前がん病変からGINの亢進がみられるがDNA損傷応答(DDR)は保たれていて、一方、浸潤癌ではDDRが異常であること、3)子宮頚部異形成/腫瘍の進展やHPV発現と53BP1 NF数の増加や異常が有意に相関することが明らかになった。
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