研究概要 |
研究の概要並びに目的:テラヘルツ(以下,THz)波の医療応用,特に非観血的な方法での病理診断への応用についての可否を検討した. 方法:半導体研究所が開発したGaP結晶式THz波発生装置を使用し以下の検討を行った. 1)厚さの薄い凍結組織切片に対するTHz波イメージングの画像の違い 剖検にて得られた腹膜(腺癌の播種を伴う)の凍結切片を,通常の病理組織診断用の薄切切片に近い7μmから10μm, 15μm, 20μm, 25μm, 30μmまで6段階の厚さに薄切し,THz波イメージングを行い,凍結切片のイメージングの可能性を検討した. 2)組織試料のTHz波透過性に影響する因子 これまでTHz波の組織透過性の相違は組織の各部分の細胞密度の相違により生じる可能性が示唆された.今回は子宮平滑筋腫の厚さ30μmの試料を用いて,得られたイメージングと腫瘍と正常 平滑筋組織を構成する平滑筋細胞の組織形態学的相違及びマイクロメーターを用いた腫瘍と正常部の核密度の数量的比較により,THz波透過性に影響する因子を検討,考察した. 結果:1)厚さ30μmの試料は周波数4.2THzでイメージングが可能であり,凍結薄切片を用いた分子マーカーの検出への応用に道を開いた.2)腫瘍中心部分の平滑筋部分ではTHz波透過性が高いのに対し,周囲の非腫瘍性平滑筋組織では透過性が低下していた。また平滑筋腫および非腫瘍性平滑筋組織を比較検討した結果,THz波の透過性には細胞密度の影響だけでなく,血管及び膠原線維など構成する細胞の特徴を反映することが証明された.
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