研究概要 |
本邦における肝炎ウイルスの汚染率は高く、肝炎・肝硬変などの肝線維症を経て肝癌を発症する例が多く、大きな社会的問題となっている。肝の線維化には、肝星細胞(hepatic stellate cell:HSC)が重要な役割を担っている。HSCは正常肝ではvitamin Aを貯蔵し、静止期と呼ばれる状態にある。 肝臓に肝炎ウイルスやアルコールによる慢性的な障害が加わると、肝細胞、Kupffer細胞、リンパ球、類洞内皮といった周囲の細胞から分泌されるサイトカインの影響を受け、形質転換を起こし、増殖能の亢進や細胞外マトリックスを過剰発現する活性化した状態になる。また、活性化したHSC自体も様々なサイトカインを分泌し、オートクライン・パラクラインに肝臓の炎症および線維化を増悪させる。当該研究課題では、ADAM (A disintegrin metaloprotenase) familyのknock-down inducible cloneによる同所移植モデルを用いて、肝癌細胞-活性型肝星細胞間の「がん一間質相互作用」におけるADAM familyの役割についてin vivoで解析したい。 本年度は以下の研究成果を得た. 1,テトラサイクリン添加時にADAM familyをknockdownすることが可能な、ヒト肝癌細胞(Tet-kADAM-HepG2)、ヒト活性型星細胞(Tet-kADAM-LI-90)を作成を試みた。当所,knockdown効率が不良でvectorの種類をInvitrogeneからClonetechに変更して効率の良いクローンを選択した. 次年度以降は,これをdouble transfectした制御系を樹立する.当該年度での論文の作成結果の公表予定はなかった.
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