研究概要 |
膀胱尿路上皮の良悪性病変に対して、3番7番9番17番の染色体のセントロメアおよびp16癌抑制遺伝子をコードする9p21遺伝子領域をMulti-color FISH (fluorescence in situ hybridization)法を用いて視覚化した。その結果、 1.新WHO分類に当てはめた尿路上皮平坦病変の病理診断は、病理医間の診断バリエーションが予想以上に幅広く、正常と異常、反応性病変と腫瘍性病変、異形成と上皮内癌の鑑別基準に、病理医間で大きな差異があった。これらの診断困難症例に対して、上記の分子病理学的解析を組み合わせることによって、非腫瘍性および腫瘍性病変の鑑別、あるいは異形成と上皮内癌の鑑別が可能になることが示唆された。 2.尿路上皮癌においては (1)高異型度症例では,セントロメアの増加と9p21の欠失が高頻度に認められた. (2)低異型度症例では大型核細胞においても染色体・遺伝子異常は少ないのに対して,高異型度症例では小型核細胞でも遺伝子異常が高頻度に認められた. (3)高異型度症例では細胞核面積が増すに従い,染色体・遺伝子異常が高頻度になる傾向が認められた. 以上より、尿路上皮癌の悪性度や予後の推定に、あるいは、診断の困難な尿細胞診における細胞異型形成の分子病理学的背景の解析に、上記の分子病理学的解析が有用な手法になることが示唆された.
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