平成22年度は、引き続き悪性骨軟部肉腫の培養細胞株を用いた実験を行った。悪性骨軟部腫瘍の1つであるdesmoplastic small round cell tumor(DSRCT)においては、腫瘍特異的なキメラ融合遺伝子であるEWS-WT1(KTS+)を治療標的の候補として選び、これをRNAiを用いてknockdownさせると、細胞増殖能が低下することを見出した。また、この際にβ-cateninを含む細胞間接着因子の発現にも影響を与えていることを見出しており、このキメラ融合遺伝子と腫瘍特異的な組織形態との関連を継続して調べている。 また、Giant cell tumor of bone(GCT)の悪性転化に関与あるいは推測することができるようなバイオマーカーの検出も行っている。GCTは良性腫瘍であるが再発が多く治療に難渋する腫瘍であり、稀に悪性転化することが知られている。また、病理組織学的に腫瘍細胞に明らかな異型性がみられないような場合にも肺に良性の転移性病変を形成するなど、その悪性転化の指標が樹立されていない。今回研究代表者の在職する施設において悪性転化したGCTを数例経験したので、benign GCTと比較検討しながら、分子病理学的な指標を見つけ出す努力をしている。現在までのところ、p53の遺伝子異常が悪性転化したGCT全例にみられている。 さらに、消化管に発生する間葉系悪性腫瘍であるGISTの予後因子であるPfetinの発現制御に関する研究も行っており、その発現低下とPfetinのプロモーターのメチル化が相関するという結果も得ている。
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