研究概要 |
本研究の目的は高脂血症病態のマクロファージに出現するACAT1陽性後期エンドゾームの機能解析である。われわれは高脂血症病態のマクロファージにおいてコレステロールをエステル化する小胞体酵素であるACAT1が後期エンドゾームに移動し、これに伴って異物貪食障害が生じることを発見した。ACAT1陽性後期エンドゾームにおけるコレステロール代謝の観点からこの現象の分子メカニズムを明らかにするために、まず、ラテックスビーズ貪食THP1ヒトマクロファージ細胞株からビーズ含有ファゴゾームの精製を試みた。低速遠心と粒子浮遊法の2段階の超遠心によって精製したビーズ含有ファゴゾームをイムノブロット法で解析したところ、非泡沫化マクロファージにACAT1陽性ファゴゾームは同定できなかったが、コレステロール負荷を行うとACAT1陽性ファゴゾームが同定できた、このACAT1陽性ファゴゾームには後期エンドゾームマーカーであるLAMP2とともに細胞内遊離コレステロール転送蛋白であるNPC1が含まれていた。興味深いことに、非泡沫化マクロファージの後期エンドゾームマーカー(LAMP2)陽性ファゴゾーム分画には早期エンドゾームマーカーEEA1は含まれていなかったが、コレステロール負荷に伴ってACAT1, LAMP2, NPC1, EEA1を含む特異なファゴゾームが出現するととが明らかとなった。コレステロール代謝の観点からこの特異なファゴゾームの機能を明らかにするために、細胞内遊離コレステロール転送阻害剤存在下のマクロファージ遊離コレステロールエステル化を検討したところ、コレステロール負荷後のマクロファージでは細胞内遊離コレステロール転送阻害下でも有意な遊離コレステロールのエステル化が生じている事が明らかとなった。今後は異物処理の観点からこの特異的オルガネラの機能解析を行う予定である。
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