研究課題/領域番号 |
20590384
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂下 直実 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (90284752)
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研究分担者 |
竹屋 元裕 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (90155052)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (40449921)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (70452886)
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キーワード | マクロファージ / コレステロール / 異物貪食 / ACAT-1 / ファゴゾーム / 後期エンドゾーム / NPC1 / オルガネラ |
研究概要 |
本研究の目的は高脂血症病態のマクロファージに出現するACAT1陽性後期エンドゾームの機能解析である。 ACAT1は小胞体に存在するコレステロール代謝酵素で、遊離コレステロールと長鎖脂肪酸からコレステロールエステルを合成する。われわれは高脂血症病態においてマクロファージの細胞内コレステロール濃度の上昇と共に小胞体の断片化が生じ、後期エンドゾームと断片化した小胞体が機能的に融合することを発見した。ACAT1陽性後期エンドゾームはLDLに由来する遊離コレステロールを効率的にエステル化しているが、生化学的な解析の結果、この特異なエンドゾームには早期エンドゾームマーカーEEA1と後期エンドゾームマーカーLAMP2が共存するのみならず、遊離コレステロール転送蛋白であるNPC1を含んでいることが判明した。ACAT1陽性後期エンドゾームを電顕的に観察すると正常のマクロファージには存在しない未消化異物が大量に認められた。この所見はACAT1陽性後期エンドゾーム陽性マクロファージでは異物を取り込んだファゴゾームの成熟遅延が生じ、異物分解処理の遅延や障害が生じていることが示唆している。この現象の臨床的な意義を検討するためマクロファージの大腸菌殺菌能を検討したところ、ACAT1陽性後期エンドゾームを誘導したマクロファージでは大腸菌の殺菌能が抑制されていることが明らかとなった。興味深いことにこの殺菌能抑制はACAT阻害剤を用いてACAT1の酵素活性を阻害すると部分的に回復することが明らかとなった。 以上のデータより、高脂血症病態のマクロファージはACAT1陽性後期エンドゾームを誘導して効率的なコレステロールエステル化を行う一方、ファゴゾームの成熟遅延の結果として異物処理・殺菌能障害が生じることが示される。これは高脂血症病態における感染防御機構の異常を明らかにしたものであり、この様な感染防御機構の是正にACAT阻害剤が効果的であることを示唆する初めての報告である。
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