セントロメアのタンパク質は、分裂細胞では、染色体を均等分配するという重要な役割を担っている。本研究は、老化でその役割がほとんど解析されていないセントロメアのタンパク質が、ヒト正常細胞(分裂寿命を持つ)では、細胞の増殖の停止に関与することを検証し、細胞の老化におけるセントロメアタンパク質の新たな役割を明らかにする事を目的としている。平成20年度、21年度はCENP-Aというキネトコア構造の形成と機能に必須のタンパク質について、その低下が老化を誘導する事を見出した。平成22年度は、CENP-Aの低下がp53依存性に増殖停止に導くこと、また他の老化モデル細胞では、実際にCENP-Aの低下とそれに伴うセントロメアのヘテロクロマチン構造の促進(セントロメアの不活性化)が生じることを明らかにし、Mol Cell Biolや学会で研究成果を発表した。これらの成果は、テロメアと同様にセントロメアタンパク質が、老化を制御する因子となりうることを示している。平成22年度は所属先の変更があったが、当初の計画通り、様々な老化モデル細胞から、ゲノムDNAとRNAを抽出し、DNAのメチル化やヒストン修飾等のエピジェネティックな制御について解析を進めた。発現解析と合わせてゲノムワイドなエピジェネティック環境に注目し、セントロメアタンパク質の低下や機能不全によって誘導される老化や、複製老化、活性化がん遺伝子で誘導される老化の分子メカニズムの一端を、発表する予定である。
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