研究概要 |
目的に即して、1.低酸素状態で維持される幹細胞の静止期[dormancy]における維持機構と、細胞周期内における自己複製の調節機構、2.造血幹細胞の細胞周期静止機構の成立とこれにかかる新生児期の造血動態変化の分子機構、3,造血幹細胞特異的細胞周期測定法と定常状態[steady state]における細胞周期静止分画の酸化的ストレス蓄積過程としての加齢・老化に伴う変化、の3点に基づいて研究を行い、特に、2・3項を中心に、以下の様な成果を得た。 2.胎生14日ないし新生児の肝臓の造血細胞並びに生後2・4・6・8週齢までの骨髄細胞での培養性コロニー形成細胞の静止期分画は、経時的に急速に拡大した。また、培養性コロニー形成細胞や脾コロニー形成細胞の静止期分画は、BrdUrdの持続標識によって、8週齢以降18ヶ月齢まで減少することなく維持されることを明らかにしているが、より未分化なLKS分画では、2ヶ月齢で観察した静止期分画より6ヶ月齢での静止期分画の大きさが減少することを見出した。従って、コロニー形成能を有する造血幹・前駆細胞では、8週齢前後で、静止期分画の成立がなされるのに対して、より未分化なLKS分画では8週齢以降に遅れる可能性が示唆された。 3.未分化脾コロニー形成細胞でのみ、若齢マウスに比べて加齢個体の静止期分画が拡大していることを明らかにしているが、この背景として、Runxと協調する造血機能性転写因子Cbfb、epigenetic gene silencerの転写因子Trim28、Aktの抑制因子で脱リン酸化酵素のPhlpp1などの発現が加齢個体で抑制きれていることを見出した。
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