研究課題/領域番号 |
20590388
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
平林 容子 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター・毒性部, 室長 (30291115)
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研究分担者 |
井上 達 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, 客員研究員 (50100110)
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キーワード | 造血幹細胞 / 幹細胞ニッチ / 生体異物相互作用 / 細胞周期 / 酸化的ストレス |
研究概要 |
目的に即して、1.低酸素状態で維持される造血幹細胞の静止期[dormancy]における維持機構と細胞周期内[cycling stage]における自己複製の調節機構、2.造血幹・前駆細胞の細胞周期静止機構の成立とこれにかかる新生児期の造血動態変化の分子機構、3.造血幹・前駆細胞特異的細胞周期測定法と定常状態[steady state]における細胞周期静止期分画の酸化的ストレス蓄積過程としての加齢・老化に伴う変化、の3点に基づいて研究を行い、1・2項を中心に、以下の様な成果を得た。 1.造血幹細胞分画としてLin^-c-Kit^+Sca1^+(LKS)を用いた骨髄再建マウスで、移植LKS分画由来の末梢血の出現頻度が270日後には減少することを見出した。文献的な知見と併せ、LKS分画以外の分画に、より未分化な幹細胞が存在することを作業仮説として検討を進めてきたが、明らかな他の分画を同定するには至らなかった。尚、経過中、骨髄内ではLKS分画由細胞が維持され、コロニー形成能を持つ細胞の90%以上を占めたものの、末梢血球への分化は、個々の骨髄再建個体毎に大きく異なることが見出された。幹細胞の分化段階に応じた機能的に異なる造血支持環境、所謂ニッチが存在する可能性や、骨髄再建の際の全身照射による障害の遺残の差異、などが示唆される知見と考えられた。 2.培養性コロニー形成細胞や脾コロニー形成細胞の静止期分画は、BrdUrdの持続標識によって、8週齢以降18ヶ月齢まで減少することなく維持されることを明らかにしている。一方、多環芳香族炭化水素受容体(AhR)遺伝子の欠失マウスの解析から、AhRが未分化幹細胞分画の維持に寄与していることを示してきた。そこでAhR欠失マウスでは、静止期分画が、経時的に縮小し続けるのか、あるいは野生型よりは縮小したままで長期に維持されるのかが注目された。3ヶ月の持続標識の結果から、より未分化な脾コロニー形成性前駆細胞では後者の傾向が、培養性コロニー形成性の前駆細胞では前者の傾向が示され、静止期維持機構は分化に伴い変遷するものと考えられた。
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