研究概要 |
これまで、ヘリカーゼ研究会会員諸氏の協力により、ウエルナー患者皮膚組織を収集しSouthern blot法により解析してきた。本年度はより客観的・再現性のあるソフトウェアーTelometricを用いた解析を行い、患者組織のテロメア長と年齢の相関が、年齢を校正した健常者皮膚の年齢相関と比較し、より急速に短縮することを明らかにした。In vivoでのケラチノサイトのテロメア短縮が4倍に亢進している事が示された(論文作成中)。 数年来収集してきたウエルナー症候群患者由来繊維芽細胞株を細胞老化に至る迄継代培養した。培養細胞metaphase標本を作製し、FISH法により、分子レベルでのテロメア長解析、サブテロメアプローブを用いた染色体組換え解析を行った。その結果、以下のことを見出した。1)WS線維芽細胞株の最大継代数は、個体差は大きいものの、コントロール株に比し明らかな低下していた。2)WS線維芽細胞株のテロメア長パターンは継代の早期に細胞老化期パターンとなること。また最大継代数の著明に低い株の細胞老化期に異常短縮テロメアの蓄積していた。3)サブテロメア領域においては約二分の一の染色体でくみかえを認め、染色体組換えが異常に亢進していた(正常人由来繊維芽細胞では、同様の方法で組換えは殆ど検出されない)。 WSでのin vivo/in vitroのテロメア短縮促進が認められ、ウェルナーヘリカーゼ異常によるテロメア維持機構の破綻が本症発症の基盤の一つとなっていることが強く示唆された。WS症例群においても、正常範囲数値から著明短縮まで個体差は非常に大きく、WS症状の多様性との関連についての解析が課題であることが、浮き彫りされた。解析検体を増やし、個人差・組換え染色体の特異性を検討中である。(参照:テロメア長は個体差が大きく、各臓器は個体特性を示しながら年齢依存性に短縮する:Takubo et al.,2002) また、テロメア長が正常範囲に維持されたWS線維芽細胞で認められた著明な組換え亢進は、WRN遺伝子の多機能性を示すものである。
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