これまで、ヘリカーゼ研究会会員諸氏の協力により、ウエルナー患者皮膚組織を収集しSouthern blot法により解析してきた。初年度(H20年度)はより客観的・再現性のあるソフトウェアーTelometricを用いた解析をした結果、患者組織のテロメア長と年齢の相関が、年齢を校正した健常者皮膚の年齢相関と比較し、In vivoでのケラチノサイトのテロメアがより急速に短縮すること(約4倍に亢進している事)が示唆された。平成21年度には、Telometricを用いて、最短のテロメア長について更なる検討を加えた。その結果、WS患者皮膚組織において、正常人(下垂体および皮膚組織)と比ペテロメア最短長が短縮していることが判明した。 一方、これ迄収集してきたウエルナー症候群患者由来繊維芽細胞株を継代培養し、metaphase標本を作製し、FISH法により、分子レベルでのテロメア長解析、サブテロメアプローブを用いた染色体組換え解析を行った結果、1)WS線維芽細胞株の最大継代数は、コントロール株に比し明らかな低下していた。2)WS線維芽細胞株のテロメア長パターンは継代の早期に細胞老化期パターンとなり、また最大継代数の著明に低い株の細胞老化期に異常短縮テロメアの蓄積していた。3)サブテロメア領域においては約二分の一の染色体でくみかえを認め、染色体組換えが異常に亢進していた(正常人由来繊維芽細胞では、組換えは殆ど検出されない)。以上から、ウェルナーヘリカーゼ異常によるテロメア維持機構の破綻が本症発症の基盤の一つとなっていることが強く示唆された。 平成21年度に解析された最短長の特異的短縮はこれ迄に解析されてこなかった現象であり、in vivoとin vitro現象をつなぐ所見となりうる。(論文作成中) 解析検体を増やし、テロメア長の分布、最短テロメア長等の個人差、テロメア長の特異性と染色体組換えとの相関、組換え染色体の特異性を検討中である。
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