研究課題
昨年度に引き続き、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来抗細胞死蛋白の感染神経細胞における細胞死抑制を含めた機能障害への関与について、特にM45蛋白を中心に検討した。1) M45遺伝子を欠失した組換えMCMVの作製。MCMVゲノムのM45遺伝子をMCMVelプロモーターEGFPカセットで置き換えたM45遺伝子欠失MCMV(rMCMV-ΔM45)に加え、hEFプロモーターEGFPカセットで置き換えたrMCMV-ΔM45も作製した.さらに、挿入カセットの両端にlox p siteを組み込み、組換えウイルス感染細胞をCre recombinase処理することでhEFプロモーターEGFPカセットを容易に除去出来るようにした。その結果、EGFPを発現しないrMCMV-ΔM45とRescue Virusを作製することに成功した。人工的に組み込まれたEGFPの影響の無い組み換えウイルスを用いた実験が可能となった。2) MCMVが発育期大脳神経細胞の樹状突起形成に及ぼす影響をより詳細に行なった。マウス胎児から採取した初代培養神経細胞に上記の組換えウイルスを感染させ、感染後4~6日で固定した培養細胞において樹状突起マーカーであるMAP2蛋白を免疫染色した。画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて感染細胞と非感染細胞のMAP2陽性樹状突起面積を別々に計測する画像解析法を開発した。その結果、MCMV(Smith株)及びrMCMV-EGFP何れにおいても感染神経細胞の形状は、太さ3μm以上の樹状突起が1~2本と非感染細胞に比べ突起数が少ない傾向を呈した。細胞一個あたりのMAP2陽性領域の面積は、MCMV(Smith株)、rMCMV-EGFP感染神経細胞、非感染神経細胞で、440、390、890μm^2であった。さらに、rMCMV-ΔM45が感染した神経細胞では樹状突起面積の減少を殆ど認めなかった(790μm^2)。以上から、CMVが発育期神経細胞の樹状突起形成を障害し、この障害にウイルス由来のM45蛋白が関わる可能性が推測された。また、これらの実験結果からウイルスの抗細胞死蛋白が細胞死抑制とは異なる新たな病原性作用を持つことが示唆された。
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