研究課題
癌の増大過程では栄養補給路である血管新生を必ず伴う。本研究では血管内皮細胞表面受容体の阻害による血管新生の制御を試みている。血管内皮細胞表面の受容体に結合したサイトカインなどのリガンドは、受容体を介して信号を伝達すると同時に受容体を内在化(internalization)させ細胞表面から受容体を消失させる。これはリガンド結合後の生理的仕組みである。この現象を人工的に起こすことができれば受容体阻害剤となる。一般的に受容体を人工的に内在化させることにより阻害する薬を「internalization inducer(くり込み薬)」と呼ぶことを提案し、従来の拮抗的阻害剤と異なる新分野の阻害剤を開拓していく予定である。これまでの研究で、ある種の硫酸多糖類は血管内皮細胞表面の特定の受容体(本研究課題ではNeuropilin-1)を内在化させ細胞表面から消失させることを明らかにしてきた。実際、内在化によって表面からNeuropilin-1が消失した結果、そのリガンドであるVEGF165の血管内皮細胞表面への結合が減少していた。さらにin vivoでの実験として硫酸多糖類投与下ではVEGF165によって誘導される新生血管は阻害されることをマトリゲルアッセイを用いて示した。MOPC315細胞株をBALB/cマウスに移植して、硫酸多糖類を腹腔内投与すると、コントロール多糖類投与群と比べて腫瘍内部のCD31陽性血管内皮細胞の減少と、腫瘍径、腫瘍重量の減少を認め、in vivo腫瘍モデルでも硫酸多糖類が抗血管新生作用を示し、さらに抗腫瘍作用を有することを証明した。また、硫酸多糖類以外の分子をスクリーニングすることによって、新たな「くり込み薬」となる候補分子を見つけており、現在その作用を詳細に解析中である。
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http://www.med.osaka-:u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page6/kurikomi.html