研究課題
癌の増大過程では栄養補給路である血管新生を伴う。本研究では血管内皮細胞表面受容体の阻害による血管新生の制御を試みている。受容体に結合したサイトカインなどのリガンドは、信号伝達と同時に受容体を内在化させ細胞表面から受容体を消失させる。この現象を人工的に起こすことにより細胞表面から受容体を消失させる薬を、私達は「internalization inducer(くり込み薬)」と呼び、新分野の受容体阻害剤として開拓している。これまでの研究で、ある種の硫酸多糖類は血管内皮細胞表面の特定の受容体(本研究課題ではNeuropilin1(NRP1))を内在化させ細胞表面から消失させることを明らかにしてきた。実際、NRP1が消失した結果、リガンドであるVEGFによって誘導される新生血管が阻害されることをマトリゲルアッセイやin vivo腫瘍モデルにて示し、さらに抗腫瘍作用を有することを証明した。平成21年度には、様々な分子を検討し、ある配列の核酸が「くり込み薬」として作用することを見いだした。核酸は容易に化学合成でき、また、末端修飾することによって血管内皮細胞に対する作用機構の詳細を解析できた。その結果、本核酸試薬はNRP1細胞外領域とKd=1.3nMで結合し、細胞表面のNRP1分子を内在化させることを共焦点顕微鏡にて確認した。またラベルした核酸を用いて核酸とNRP1分子の共局在を認めた。しかし、NRP2、gp130、CD31、VEGFR-2などの血管内皮細胞表面分子を調べた所、少なくともこれらの分子に対しては影響せず、本核酸試薬による細胞表面分子の内在化誘導はNRP1に対してある程度の特異性を持った現象であることが明らかとなった。この核酸試薬がin vivoで実際にNRP1を阻害し、抗血管新生作用が見られるか否か、マウス網膜血管新生系を用いて検討中である。
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