研究課題
癌の増大過程には栄養補給路である血管新生を伴う。本研究では血管内皮細胞表面の受容体の発現を阻害することにより血管新生の制御を試みた。一般に受容体に結合したサイトカインなどのリガンドは、受容体を介して信号を細胞内に伝達すると同時に受容体を内在化させ細胞表面から受容体を消失させる。この現象を人工的に起こすことにより細胞表面から受容体を消失させる薬を、私達は「internalization inducer(くり込み薬)」と呼び、新分野の受容体阻害剤として開拓した。代表的な血管新生促進因子であるVEGFの細胞表面受容体Neuropilin 1 (NRP1)に関して研究を行った。平成22年度には、poly Gやoligo Gなどのグアニン繰り返し配列を持つ人工合成核酸がNRP1の細胞外領域とKd=1.3nMで結合し、細胞表面のNRP1分子を内在化させることを共焦点顕微鏡にて確認した。oligo G存在下1時間後には細胞表面のNRP1レベルは90%消失し、本来のligandでああるVEGF165の血管内皮細胞表面への結合が阻害されることを示した。しかし、NRP2、gp130、CD31等の表面分子のレベルには影響は与えず、ある特異性を持っていることが分かった。さらに、oligo G処理後では、VEGFによる受容体のチロシンリン酸化、血管内皮細胞の遊走刺激、細胞増殖なども阻害することを確認した。また、レーザー照射後の網膜新生血管領域を観察する系にて、oligo Gを投与した眼球では網膜の新生血管が阻害されることを示した。阻害の程度は陽性コンロトールとして使用した抗VEGF抗体とほぼ同等であった。コントロールであるoligo Aは網膜新生血管には影響しなかった。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Expert Rev Clin Immunol.
巻: 6(6) ページ: 843-54
Rheumatology (Oxford).
巻: 49(12) ページ: 2408-12
Blood.
巻: 116(16) ページ: 3099-107
Rheumatology(Oxford).
巻: 49(4) ページ: 824-6
Mod Rheumatol.
巻: 20(2) ページ: 130-3
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page6/kurikomi.html