平成22年度では、1)乳癌組織におけるTOPKの発現性と組織学的悪性度の検討、2)TOPK-Raf結合活性の生物学的意義の検討について実験を行いまとめた。その結果、1)免疫組織学的検討においてはTOPK染色性のスコア化と乳癌悪性度との比較を総括し、TOPKの発現性と乳癌の悪性度、増殖活性との相関性を得ることが出来た。2)Rafとの結合性ならびにその生物学的意義の検討に於いては、TOPKとRafの結合に必須であるアミノ酸配列部分を同定し、細胞内でのin vivo結合性の検討を行った結果、TOPKとRafが生物学的に有意に結合して活性を示している可能性が認められた。結果、TOPKはCyclinB/cdk1キナーゼ複合体に結合して、cdk1基質のリン酸化を促進する効果があって、PRC1蛋白のリン酸化を上昇させることによって、細胞質分裂に関与するのみならず、MAPK経路とも深く関与し、p38MAPKやJNKさらにはERKなどもリン酸化させて活性化するその全貌が少しずつ明瞭となってきている。これに加え今回の研究によってTOPKはRafとの結合を介してERKシグナルを増強させることが明らかとなり、乳癌増殖におけるEGFレセプター/HER2シグナルの役割とその臨床応用においてTOPKが果たす役割の大きさを示唆するものとなった。なおトランスジェニックマウス作製はさらに実験検討中である。以上、本年の予定は当初のほぼ計画通り進行させることができ、その結果、TOPKの機能について重要な結果を得ることができた。
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