研究概要 |
本研究の目的は動脈硬化症の発症、進展について生活習慣リスクと病変形成時の炎症性機序との関連を明らかにする事である。疫学的には心理社会的ストレスが動脈硬化性疾患のリスクを増加させるが、細胞生物学的機序は不明であり、体液性調整失調による炎症機転を介して動脈硬化性変化に関与するかどうか動物モデルにおいて検討する。本年度は遺伝的動脈硬化モデルマウスApoE Knockout mouseを用い、水迷路試験にて心理学的うつ状態を誘発、体液性因子、リンパ球応答に関する免疫学的検討と動脈硬化性変化の組織学的検討を行った。高脂肪食投与下の心理学的負荷試験で血中脂質濃度に変動とは独立してストレスホルモンであるコルチゾール値の変化、またConA刺激下脾リンパ球培養上清のELISA解析で、Th1サイトカイン(INFg)、Th2サイトカイン(IL13)の双方の変動を認めた。FACS解析ではCD4,CD8,NK等の膜表面マーカー発現様式に著変は認めていないが、測定backgroundを低減させ再検予定である。形態学的検討では高脂肪食投与4週間後のApoE Knockout mouseでは顕著な動脈硬化性変化を示し行動心理学的ストレス負荷の影響がマスクされる可能性が判明し、より早期の病変形成を解析中である。in vitroの解析では培養平滑筋細胞で動脈硬化進展と関連性の深いpro-inflammatory cytokine、IL18が、血小板由来増殖因子共存下で組織コラゲナーゼ発現を誘導する事を見出し、上記動物モデルの病変形成と血管壁局所の病変形成とを関連づける分子として注目している。以上、動脈硬化モデル動物では心理学的負荷により、ストレスホルモン分泌様式の変化とリンパ球応答に変化をきたす可能性があり、引き続き実験結果の再現性確認、精度向上を計り、動脈硬化性変化との関連を検討したい。
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