研究概要 |
病理組織学的な検討後の腫瘍部から充分に離れた肉眼的に正常大腸粘膜と思われる部位を対象に、61症例を検討した。アルシアンブルー染色でムチン枯渇巣(mucin depleted foci, MDF)とメチレンブルー染色で大腸陰窩変異巣(aberrant crypt foci, ACF)を同定した。加えて、それらがオーバーラップする病変(overlapping lesion, OLL)も検討している。結果として齧歯動物同様にMDFが存在すると思われ、平坦型腫瘍の初期病変の可能性を示したことは前年度報告した。結果はACFが52症例(85.3%)、100cm^2当たり約6個に対して、MDFは20症例(38.9%)、同約2個で、OLLは14症例(23%)、同1.4個であった。組織学的にMDFと考えられた病変には、齧歯類ほどの異型腺管は乏しいものの、通常右結腸には散見されるパネート是顆粒を要する腺管形成が、一部左結腸においてもパネート顆粒を有する細胞で構成されていた。また、OLLはMDFと同様に異型腺管としては軽度ではあるが、一部鋸歯状変化を呈していたこのことは、鋸歯状腺腫形成との関係を含めて興味ある所見と考えている。昨年度までは本学倫理委員会で承認を得た病理部に保管されていた症例を利用した結果であったが、本年度、新たに23症の患者から同意書を頂き、その解析・検討を開始した。
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