ライソゾーム病における自己抗体産生機序の解明のために、Sandhoff病モデルマウス(SDマウス)の胸腺を用いて以下の研究成果を得た。 1)形態を主体とした解析 ・15週齢のSDマウスでは胸腺皮質T細胞の顕著な減少が見られる。SDマウスの胸腺ではTUNEL陽性の核の断片が多数検出され、核の断片を細胞質に含むマクロファージが多数確認された。一方、Fc Receptor gamma鎖をノックアウトしたSDマウスでは胸腺の退縮が遅延し、腫大化したマクロファージも減少していた。これらの結果からSDマウスの胸腺ではT細胞のマクロファージによる貪食が、アポトーシスの亢進および抗原抗体反応によって顕著に増加していることが示唆された。 ・15週齢のSDマウスの胸腺において高発現している遺伝子のひとつ、B1細胞遊走性ケモカインCXCL13を免疫染色法で検出したところ、腫大化したマクロファージと思われる細胞の細胞質が陽性となり、主な産生細胞はマクロファージと考えられた。 2)SDマウスにおける胸腺の役割の検討 SDマウスにおける胸腺の病態への関与を明らかにするため、胸腺摘出を予定していたが、代替実験として、SDマウスで病態改善が見られたとの報告がある骨髄移植を実施した。その結果、胸腺の退縮は改善し、また、自己抗体価の産生も減少した。この結果から、骨髄移植によるSDマウスの病態の改善には胸腺の改善が関与していることが示唆された。
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