研究概要 |
本研究はSandhoff病(SD)における自己抗体産生の機序を解明することを目的とし、21年度は研究成果発表に向けた再現性の確認実験に重点を置いた。 1)昨年度までに我々はSDマウスの胸腺の解析により、自己抗体産生時期に相関する急激な退縮や、異常に増殖したマクロファージによるB細胞遊走因子の高発現および、自己抗体産生を行うと考えられているB1細胞の顕著な増加を確認した。これらのメカニズムは多発性硬化症のモデルであるEAEマウスや関節リウマチなどの自己免疫疾患でも確認されており、SDマウスもこれらの自己免疫疾患と同様のメカニズムで自己抗体を産生しているものと示唆される。これらの結果の再現性を確認し、論文にまとめ現在投稿中である。また、第32回日本分子生物学会年会にて報告した。 2)SDの自己抗体産生に関与する可能性のあるB細胞遊走因子に対する中和抗体を投与する時期を決定するため、発現時期を解析した結果、13週齢以降に急激に上昇していることが明らかになった。 この結果をもとに中和抗体の投与を次年度に行う予定である。 3)in vitroの系で、SDモデルマウス由来のマクロファージがGM2,GA2の蓄積によって、自己抗体産生性因子を産生するかどうかを検討した。その際に、胸腺T細胞との共培養によってGM2, GA2蓄積させることを試したが、データに再現性がなかった。この原因として、共培養に依存した何らかの因子によりサイトカインの産生等が抑制されている可能性が考えられたため、次年度はガングリオシドを直接培地に添加する等のよりシンプルな系を用いて引き続き解析を行う予定である。
|