研究概要 |
TNFレセプターを介するシグナル伝達に関与するアダプター分子であるtraf2^<-/->マウスを解析した結果、traf2^<-/->マウスは大腸炎が自然発症することを見いだした。traf2^<-/->マウスは生後1週頃より野生型マウスに比較し、発育や体重増加の不良が認められ、生後約3週以内に全個体が死亡する。組織学的な検討の結果、大腸粘膜および粘膜下へのB細胞の著明な細胞浸潤が認められることが明らかとなった。またCD4+CD25+細胞の比率は野生型マウスに比較して低下していないことが明らかとなった。さらに大腸局所におけるサイトカインの産生をreal-time PCRで解析したところ、tnfα,il-6,ifn-γ,il-17などの炎症性サイトカインの発現の上昇が認められたことより、TNFαの中和抗体をtraf2^<-/->マウスに投与したが腸炎は改善されず、さらにil-17ノックアウトマウスあるいはifn-γノックアウトマウスとの二重欠損マウスを作製しても腸炎は改善しなかった。一方、これまで腸炎を抑制すると考えられてきたil-10の発現亢進が大腸で認められ、さらにその亢進はtranf2^<-/->マウスの胎生期の腸でも認められたことから、IL-10に対する中和抗体を全身投与したところ、予想外な事に腸炎の著明な改善が認められた。以上のことより、tranf2^<-/->マウスで認められる大腸炎は局所におけるIL-10産生の亢進の結果であることが明らかとなった。
|