研究概要 |
我々は、骨格筋組織中に存在するヘキスト色素を排出する能力が高いside population(SP)細胞の詳細な検討を行い、骨格筋SP細胞はヘテロな集団であり、その亜分画であるCD31陰性CD45陰性SP細胞は1)骨格筋傷害時に活発に増殖する事、2)in vitroにて脂肪細胞、骨細胞への分化する事、(Uezumi et al. Biochem Biophys Res Commun, 341 : 864-73, 2006)3)ジストロフィン欠損mdxマウス骨格筋に筋芽細胞と共移植すると移植効率を著しく上げる事(Motohashi et al., Am J Pathol, 173 : 781-791, 2008)を報告した。更に、CD31陰性CD45陰性SP細胞は、多くの細胞外マトリックスタンパク質や、サイトカイン、プロテアーゼを産生し、CD31陰性CD45陰性SP細胞による移植効率の促進には、MMP-2等を分泌し、細胞外マトリックスの再構築を促進し、筋芽細胞の移動を促進することが重要であることを明らかにした。網羅的遺伝子発現解析により、マクロファージや筋芽細胞に比較して、CD248(Endosialin ; TEM1)という膜タンパク質がCD31陰性CD45陰性SP細胞に特異的に発現することを見出した。そこで、CD248遺伝子の上流領域をクローニングし、その下流にsDTR(サル・ジフテリア毒素受容体)-EGFPをつないだコンストラクションを作成し、トランスジェニックマウスを作出しF_0を数ラインを得た。さらに野生型C57BL/6と交配してF1を得た。現在トランスジーンの発現を解析している。今後は、ジフテリア毒素をマウスに投与し、CD31陰性CD45陰性SP細胞を生体から除去し、その機能を調べる予定である。この骨格筋に存在する間葉系幹細胞の役割を調べることで筋の再生の制御機構が解明されれば、筋ジストロフィーなどの筋疾患への再生医療への応用が期待される。
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