研究課題
我々は骨格筋間葉系細胞であるCD31陰性CD45陰性side population(SP)細胞が、筋再生中活性化され、増殖し、筋再生を促進している事を明らかにし、更に網羅的遺伝子発現解析により、マクロファージや筋芽細胞に比較して、CD31陰性CD45陰性SP細胞にCD248(エンドシアリン)という膜タンパク質が特異的に発現することを見出した(Motohashi et al., 2008)。CD248遺伝子のプロモーター領域にDTR(ジフテリア毒素受容体)-EGFPをつないだconstructを作成し、トランスジェニックマウスを作成したが、GFPの発現が見られなかった。constructに含まれる転写調節領域の長さが不十分であった可能性があるため、BACクローンを用いたconstructの作製を現在行っている。CD31陰性CD45陰性SP細胞の筋再生過程における動態をFAP抗体とペリオスチン抗体で組織化学的に調べたところ、筋再生が盛んな時期に骨格筋の間質に多く陽性細胞が認められ、筋再生が完了するとその数が減少していた。この骨格筋間質の細胞は、筋ジストロフィーなどの病的な筋では、骨格筋の線維化や脂肪化に関与していると考えられている。そこで、いろいろな週齢(6週、6ヶ月、14ヶ月)のジストロフィン欠損mdxマウスの骨格筋から細胞を調整し、増殖能を胎児線維芽細胞(MEF)と比較したところ、14ヶ月のものは、増殖能が低く、SA-β-gal陽性であった。次に14ヶ月齢mdxマウスの骨格筋から線維芽細胞様の細胞とMEFのRNAを調整し、アレイによって網羅的遺伝子解析を行った。Mdx細胞はFACSで分離したCD31陰性CD45陰性SP細胞と類似の遺伝子発現パターンを示したが、加えて細胞増殖に関与する遺伝子発現が下がり、生体防御や免疫反応に関与する遺伝子群が上昇していた。この細胞の機能低下により筋ジストロフィーの筋再生能が低下し、さらにこのような細胞が筋ジストロフィーの進行に伴う線維化や脂肪化に直接関与すると考えられた。
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