研究課題/領域番号 |
20590425
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
新川 武 琉球大学, 分子生命科学研究センター, 准教授 (50305190)
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研究分担者 |
宮田 健 琉球大学, 分子生命科学研究センター, 研究員 (20448591)
平良 東紀 琉球大学, 農学部, 准教授 (60315463)
小濱 秀泰 琉球大学, 分子生命科学研究センター, 研究員 (10514581)
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キーワード | マラリア / コンポーネントワクチン / アジュバント / 分子設計 / ワクチンプラットフォーム / デリバリー分子 / 抗原提示 / 標的化 |
研究概要 |
本研究の目的は、新規アジュバント及びデリバリーシステムの基盤構築である。特に、有効なワクチンが存在しないマラリアに対するコンポーネントワクチンの開発のための新しいワクチンプラットフォームを築くことが目的である。さらに、本研究の遂行によって確立するアジュバント(免疫賦活物質)やデリバリー(抗原運搬)システムを他の感染症ワクチン開発へ応用することも視野に入れ、研究開発を進めている。細菌やウイルスのように不活化ワクチンや弱毒生ワクチンの開発が困難なマラリアを代表とする寄生虫疾患に対しては、組換え抗原を利用したコンポーネントワクチンに依存せざるを得ないのが現状であり、このタイプのワクチンは、安全面では極めて優れているものの、免疫原性の低さが致命的な問題であり、アジュバントの需要が極めて大きい。本プロジェクトで申請者は独自の感染防御アジュバント開発を中心にワクチンプラットフォーム構築に注力しており、その具体的標的分子として三日熱マラリア伝搬阻止ワクチン候補抗原(Pvs25)を選択した。その結果、20年度は以下の三段階の達成目標中、一部は第二段階目まで達成した。 1.新規アジュバント・デリバリーシステムの構築 2.その生化学的、免疫学的機能解析並びにマラリアに対する感染防御機能の解析 3.構築した新規ワクチンプラットフォームの他の感染症への応用技術確立 本年度デザイン、構築した新しいデリバリー分子は、樹状細胞、B細胞等の抗原提示細胞を標的化していると考えられ、 Pvs25抗原との混合によって抗原特異的抗体応答の顕著な上昇が認められた。さらに、そのデリバリー分子に抗原を搭載することで免疫応答は更に上昇することが確認された。この結果は、デリバリー分子の運搬機能を欠如させた変異導入分子では見られないことから、本システムの運搬機能が免疫原性向上に極めて重要である所見を得た。さらに、誘導された免疫応答の強弱は、マラリア原虫の感染防御率とも完全に一致することが確認された。すなわち、タイ国のマラリア感染患者の血液サンプルを用いたメンブレンフィーディング法による原虫伝搬阻止効果解析の実験では、(1)抗原単独、(2)抗原/デリバリー分子混合、(3)抗原/デリバリー分子融合の順に感染防御率が次第に上昇することが確認された。さらに、この感染防御率は、既存の実験用アジュバントであるフロイトアジュバントやヒトへの臨床応用が認められている数少ないアラムアジュバントと同程度もしくはそれを上回るものであった。次年度はこのシステムの更なる改良を目指して分子デザイン研究を実施する。
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