研究課題
●平成21年度実施研究1) サルマラリア感染個体による脳MRI解析および造影灌流強調画像解析:ニホンザル2頭にサルマラリア原虫(Plasmodium coatneyi)を静脈内接種し、感染経過にともなう脳MRI解析および造影灌流強調画像解析を行なった。その結果、両個体ともに微小出血や梗塞巣、浮腫等の器質変化を疑うMRI所見は認められなかった。また造影灌流強調画像解析では脳血液量(rCBV)、平均通過時間(MTT)および血流量(rCBF)を測定し、感染前と重度発症時の比較を試みた。その結果、前頭部、側頭部、後頭部および小脳において感染前と発症期との間に明確な違いは認められなかった。2) 病理組織学的観察:各感染個体の最終MRI撮像の直後に剖検し、脳の病理組織学的観察をおこなったところ、大脳および小脳血管内に多数の感染赤血球接着像(sequestration)が認められた。●結論と次年度の計画:脳血管内におけるsequestrationの形成は脳マラリアの特徴的病理現象であり、この現象は本研究の感染個体でも高頻度に認められた。その一方で、今年度の研究では発症時の脳MRI所見および血流環境に著しい変化は認めらなかったことから、sequestrationの形成が短時間で脳の器質障害に結びつかないことが示唆された。次年度では感染個体の脳各部位の病理変化と、MRIデータおよび造影灌流強調画像データの関係を詳細に解析し、総合的な結論を導き出す。
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