研究課題
●平成22年度実施研究1) サルマラリア感染個体による脳MRI解析および造影灌流強調画像解析:ニホンザル2頭にサルマラリア原虫(Plasmodium coatneyi)を静脈内接種し、感染経過にともなう脳MRI解析および造影灌流強調画像解析を行なった。その結果、両個体ともに微小出血や梗塞巣、浮腫等の器質変化を疑うMRI所見は認められなかった。また造影灌流強調画像解析では脳血液量(rCBV)、平均通過時間(MTT)および血流量(rCBF)を測定し、感染前と重度発症時の比較を試みた。その結果、前頭部、側頭部、後頭部および小脳において感染前と発症期との間に明確な違いは認められなかった。2) 病理組織学的観察:各感染個体の最終MRI撮像の直後に剖検し、脳の病理組織学的観察をおこなったところ、大脳および小脳血管内に多数の感染赤血球接着像(sequestration)が認められたが、神經細胞の変性や脳組織の器質的変化は認められなかった。●平成20年度~平成22年度の研究成果:脳血管内におけるsequestrationの形成は脳マラリアの特徴的病理現象であり、この現象は本研究におけるいずれの感染個体でも高頻度に認められた。その一方で、発症時の脳MRI所見および血流環境に著しい変化は認めらなかったことから、sequestrationの形成が短時間で脳の器質障害に結びつかないことが示唆された。これらの結果を総合すると、脳血管内で発生するsequestrationの形成は、脳マラリアにおける中枢神経症状の主要な要因であると思われるが、単純に脳内の虚血性変化や脳の血流障害を誘発するものではないことが明らかとなった。
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