研究概要 |
γδT細胞によるマラリア原虫排除機構を解明するため、Plasmodinm berghei XATに感染した野生型(WT)マウスとTCRδKO マウスの比較をおこなった。その結果、血中 IFN-γが感染TCRδ KO マウスにおいて低下している事が明らかとなった。主なIFN-γ産生細胞であるヘルパーT細胞(CD4^+T細胞)のTh1細胞への影響を調べたところ、感染TCRδ KOマウスでTh1 細胞におけるIFN-γ産生の割合が低下していることがわかった。さらに、感染WT マウスの脾臓では、このTh1細胞のIFN-γ産生の誘導に先立って、γδ T細胞のIFN-γ産生が活性化されていることを明らかにした。すなわち、γδ T細胞はナイーブT細胞からTh1 細胞への分化誘導を促進する役割を担っていることが示唆された。 Th1細胞への分化は樹状細胞(DC)によっても促進されるため、γδ T細胞のDCの成熟への影響ついても検討した。感染 WT マウスでは脾臓中のconventional DC、plasmocytoid DC が一時的に増加することがわかった。また、それと同時にMHC-IIや共刺激分子であるCD80,CD86,CD40などの発現が一時的に上昇することがわかった。感染TCRδ KO マウスを同様に解析し比較すると、DCの増加やMHC-IIや共刺激分子の発現上昇が弱くなっていることが明らかになった。すなわち、γδ T細胞はDCの成熟・活性化に重要な役割を担っていると言える。先述した、感染後のγδ T細胞におけるIFN-γ産生の活性化の始まりは、DCの増殖や成熟とほぼ同時期であり、γδT細胞とDCが協調的に活性化を行っている可能性が示唆された。マラリア原虫感染におけるγδT細胞とDCの関係性についてはいまだに未解明のままである。本研究の結果はその一端を明らかにした重要なものといえる。
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