マスト細胞は、IgEを介した即時型アレルギー反応を引き起こすエフェクター細胞であり、様々なアレルギー疾患や自己免疫疾患の発症・病態形成に関与しているが、最近では自然免疫の活性化及び獲得免疫両方の分野においてマスト細胞が感染防御に重要であるとの報告もされている。マスト細胞は全身の皮膚・粘膜および血管周囲に分布し、腫瘍壊死因子の主要産生細胞である。これまでの感染実験から本原虫感染急性期においては、全身性の炎症反応が起こっておりこの炎症反応におけるマスト細胞の役割について着目した。トキソプラズマ感染においては特異的なIgE抗体の産生はほとんど観察されない。IgE非依存性経路によるマスト細胞活性化について、マスト細胞欠損マウス(W/Wv)と野生型(+/+)の対照群のマウスに1×10^6の原虫を腹腔内接種し、接種後の腹腔内のマスト細胞数について比較すると、感染後1時間から対照群においてマスト細胞が腹水に検出された。W/Wvマウスに、+/+の骨髄から採取しmurineIL-3を含むWEHI3細胞の培養上清存在下で培養した骨髄由来培養細胞(BMMCs)を移入した。このマウスにトキソプラズマ原虫tachyzoitesを腹腔内に接種した後回収した腹腔内滲出液を調べた結果、マスト細胞が検出されたが、その数は単球やマクロファージに比べて非常に少なかった。腹腔回収液は液量が増えてしまい、腹腔液中のサイトカイン検出が出来なかった。そのため、滲出してきた細胞で発現するTNFやサイトカインやケモカインの遺伝子発現状況を現在調べている。TNFによる好中球の受ける影響について、培養細胞のHL60を用いてin vitroでの応答を見ると、TNFでプライミングされたHL60がtachyzoitesの刺激を受けると、活性酸素産生や炎症性サイトカインIL-6の遺伝子発現が増強していた。
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