研究概要 |
赤痢アメーバは熱帯・亜熱帯を中心に世界中に分布しており、年間約5千万人が大腸炎や肝膿瘍を発症し、約10万人が死亡している。我が国でも赤痢アメーバ症は年々増加している。赤痢アメーバには、形態的に区別できないが病原性のないEntamoeba dispar やE. moshkovskiiなど近縁のEntamoeba種も存在するため、正確に同定することが早期に治療を開始するためにも重要である。また、種同定だけでなく、感染経路や地理的由来の解明にっながるような赤痢アメーバ株の多型解析法を確立することが現在望まれている。赤痢アメーバの栄養型表面には、接着に関与するシステインリッチな蛋白質Igl(intermediate subunit of Gal/GalNAc lectin)が存在する。Igl遺伝子は2つ存在し、HM-1:IMSS株では1101アミノ酸のIgl1と1105アミノ酸のIgl2をコードしている。今年度は国内分離株を中心にIg1遺伝子の塩基配列を決定し、ATCC登録株を含めて赤痢アメーバ22株について多型の解析を行った。その結果、Igl1は大きく5つのタイプ(A〜E)に分類できた。内訳は、Aタイプ8株、Bタイプ5株、Cタイプ1株、Dタイプ3株、Eタイプ5株であった。このうち国内分離株12株は、Aタイプが7株、Bタイプは1株、それにCタイプ、Dタイプのすべてで、Eタイプは含まれなかった。一方、Igl2は大きく2っのタイプ(A, B)に分かれ、Aタイプ13株、Bタイプ9株であった。国内分離株では、Aタイプが9株、Bタイプは3株であった。また、各株におけるIgl1とIgl2の組み合わせをみると、大きく7通りに分類できた。
|