アメーバの脱嚢及び嚢子形成に必須なアクチン細胞骨格再編成の重要分子であるアクチン脱重合因子コフィリン(cofilin : Cfl)に注目し、昨年度得られた成果につき再検索・再検討・再現性の確認を行うとともに、新たな課題についても検討した。1.相同検索:赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica : Eh)及びE.invadens(Ei)のゲノムデータベースを用いた相同検索の結果、Ehには1種、Eiには3種Cfl(Cfl-1、Cfl-2、Cfl-3)の存在が明らかになった。同様に相同検索の結果、運動性の本体であるEiのアクチン(actin : Act)にはAct-1、Act-2の2種の存在も判明した。2.クローニング・塩基配列の決定:Cfl及びAct遺伝子につき、PCRによる増幅、プラスミドへの導入を行い、その塩基配列を決定した。3.系統解析:EntameobaのCflならびに他の生物のCfl/ADFを用いて系統樹を作成し解析した結果、EntameobaのCflは他の生物のCfl/ADFとは離れた独立したクレイドを形成した。4.局在の解析:EiCfl-2及びActに対する抗体を用いた蛍光抗体法により局在を調べた結果、栄養型、嚢子、脱嚢したアメーバの細胞膜直下の領域が両者ともに染色され、同じ局在を示した。特に、栄養型及び脱嚢したアメーバの仮足の部分は両者ともに強く染色された。5.栄養型、嚢子のCfl及びActのmRNAレベル:栄養型ではCfl-2が圧倒的に発現され、Cfl-1とCfl-3はほとんど発現されておらず、Cfl-2も嚢子では極めて低いレベルになることが確認された。Actも栄養型での発現が極めて高く、Act-2がAct-1よりも発現が高かった。6.脱嚢誘導に伴うmRNAレベル:各Cflの脱嚢誘導5時間後のmRNAレベルの亢進が確認され、cytochalasin D存在下でのCfl-1とCfl-3の著明な亢進も確認された。
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