腸管寄生線虫の定着と排除に関わる分子の同定のために、ネズミの寄生虫であるNippostr Ongylus brasiliensis(Nb)のマウス感染系を用いた。研究代表者らはこれまで、Nbのマウスからの排除に腸管粘液の主成分であるムチンの糖鎖末端にシアル酸が付加することが重要であることを示してきた。本研究では、ムチンのシアル化がNbの定着と排除にどのように関わっているのかを、寄生虫(Nb)側のシアル酸結合部位(分子)を同定することで明らかにすることを目的としている。 1.シアル酸結合部位の探索;シアル酸結合部位を調べるために、BSA(ウシ血清アルブミン)標識したシアル酸をNbと反応させ、蛍光標識した抗BSA抗体を作用させる系を確立しつつある。同様に、Nbの抽出物を電気泳動して分子量別に展開し、膜に転写させた後に各分子量に対するシアル酸結合性を検討中である。 2.シアル酸に対するセンサー探索;Nbにシアル酸を認識するセンサーが存在する可能性を考え、シアル化ムチンを含む粘液に対するNbの化学走性を調べた。これまでのところ、シアル化ムチンに対する走化性は特に認められず、粘液に対する負の走化性を認めた(第68回日本寄生虫学会東日本支部大会浜松市、第125回成医会東京都、第2回蠕虫研究会宮崎市)。 3.Nb結合性宿主分子の探索;排除されるNbとされないNbとの比較で、排除されるNbのみに結合しているマウスの粘液中のタンパク質の検出を検討中である。
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