研究概要 |
これまでの研究で、アフリカトリパノソーマ原虫の14-3-3(Tb14-3-3)分子の研究で、Tb14-3-3のIおよびIIは、酵母、植物、哺乳類まで、よく保存されているリン酸化ペプチドに結合しない点で、薬剤のターゲットとなり得る可能性がでてきた。ところが、リン酸化依存性の結合がTb14-3-3にほとんど認められないため、結合蛋白を探すのに困難を極めた。この様な状況のなかで、私は、Tb14-3-3II分子が脂質代謝に影響をあたえることを発見した。すなわち、Free Fatty Acid (FFA)とTriglyceride (TG)の蓄積が、Tb14-3-3IIの過剰発現で、またノックダウンの際、逆に減少がおこることである(実験にはすべて昆虫型細胞株を用いた)。この脂質代謝の劇的な変化をマーカーとして、Tb14-3-3の機能を明らかにするため、まず、FFA, TG合成に重要である3つの酵素についてTb14-3-3IIとの結合を調べた。具体的には、acetyl-CoA carboxylase (Tb927. 8. 7100), biotin-acetyl-CoA ligase (Tb11. 01. 1820), acetyl-CoA synthetase (Tb08. 26A17. 430)をSanger InsitituteのGene Data baseを参考に、PCRにて、これらの遺伝子を哺乳類発現vectorにクローニングした。問題なのは、これらの遺伝子が、機能的に働いているか否か不明である点であるが、TG合成の律速酵素であるacetyl-CoA carboxylaseに関しては、S.pombe(酵母)と45%の相同性があり,機能的にも働いている可能性が高い。ヒトHEK293細胞を用い、これらの遺伝子がコードする蛋白と、Tb14-3-3の結合を調べた。これらすべての蛋白とTb14-3-3IIは、NP-40を用いた免疫沈降法で示される強い結合を示さないことが判明した。そこで、私は、次に、Tb14-3-3IあるいはIIノックダウン細胞及びノックダウンしていない細胞を用い、acetyl-CoA carboxylaseのbiotin化をstreptavidine-HRPを用いたwestern blot法にて検討した。その結果として、Tb14-3-3IでなくIIノックダウンの時のみ若干のacetyl-CoA carboxylaseのbiotin化の低下が認められた。すなわち、これは、acetyl-CoA carboxylaseの活性の低下、TG合成の低下を意味するが、解析したクローン間の差で無いことなど、詳細な検討を必要とする。
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