研究概要 |
14-3-3分子に結合するリン酸化ペプチドは、mode1, mode2, mode3とそれ以外のモチーフに分類される。これまでの研究でアフリカトリパノソーマ原虫の14-3-3(Tb14-3-3)分子は酵母からヒトまで保存されているmode1およびmode2モチーフには結合を示さないことを明らかにしてきた。mode3モチーフすなわち、C-末端のリン酸化モチーフ、pSer/Thr-X, pSer/Th-X-Xモチーフについては、近年明らかになったモチーフであるため、Tb14-3-3とmode3モチーフについては、検討を加えていなかった。そこでTb14-3-3分子に結合が予想されるリン酸化ペプチドを持つタンパクを、T.bruceiゲノムデーターベースを用い、mode3モチーフを持つタンパクをタグ付きタンパクとして、ヒト293T細胞に発現させ、タグ抗体で免疫沈降後,Far-western blot法にて、Tb14-3-3との結合を指標にスクリーニングした。その結果、Protein phosphatase 2C(PP2C)がTb14-3-3と結合することが判明した。次にPP2Cと他の9種類のmode3モチーフを持つC-末端のキメラ蛋白を発現させ、同様に、免疫沈降後Far-western blot法にて、Tb14-3-3との結合を指標にスクリーニングした。それにより、PP2Cより、SAP-domainを持つ分子量31kDaの機能不明タンパクp31-SAPの方が、Tb14-3-3により強固に結合する事が判明した。次にp31SAPをタグ付きタンパクとしてT.bruceiに発現させ、mode3モチーフ依存的にin vivoでTb14-3-3と結合することを、免疫沈降法にて証明した。これは、世界で初めて同定したTb14-3-3結合タンパクである。さらにこのp31SAP由来のリン酸化ペプチドは、Tb14-3-3と結合するタンパクをスクリーニングする上で有用であることを証明した(PLoS ONE 2010発表)。この発見により、生物間で保存されていないリン酸化ペプチド依存的にTb14-3-3が分子シャペロンとして結合タンパクに働きかけるという新展開が生まれた。Free Fatty Acid(FFA)とTriglyceride(TG)の蓄積がTb14-3-3IIの過剰発現で、またノックダウンの際、逆に減少がおこる現象は、Tb14-3-3Iには結合しないがTb14-3-3IIに結合するタンパク分子が引き起こす可能性を想定した。まず、Tb14-3-3I knock down T.bruceiにタグ付きTb14-3-3IIを発現させる遺伝子を導入あるいは、Tb14-3-3II knock down T.bruceiにタグ付きTb14-3-3Iを発現させる遺伝子を導入し、薬剤選択により、クローンを樹立し、それぞれクローンをB8, B9と命名した。B8, B9の細胞を用い、タグ抗体で免疫沈降後、Tb14-3-3IIタンパクのみに結合するタンパクをnanoLC-MS/MSにて解析中である。
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