研究概要 |
[背景と目的]分泌タンパクを仲立ちとした宿主寄生体相互作用に注目し、その機能が未だ不明であり多くのパラログをもつCRISP/SCP/Tpx-1/PR-1分子(住血吸虫においてはVAL)を材料として解析を行うこととした。本年度は、代表的なVAL分子の発現プロファイルの解析とクローニングを試みた。クローニングに成功した分子の組換えタンパクを作成し、マウスでの免疫応答の解析を行った。 [方法]データベース(GeneBankおよびSchistoDB)の配列をもとにプライマーを作成し、リアルタイムPCRで発育段階別発現の解析を行った。この情報をもとに制限酵素部位を付加したプライマーでTAクローニングを行った。その後一部の分子を発現ベクターヘサブクローニングし、大腸菌で得た組換えタンパクをマウスに免疫し、脾細胞を抗原で刺激してサイトカイン応答をELISAで測定した。 [結果]VAL-7はセルカリアやシストソミュラ、VAL-12は成虫、VAL-3,5,9,15,28は虫卵で高い発現が見られた。VAL-3,5,7,9,12,15についてクローニングが成功し、うちVAL-7,12をFCAと共にマウスに免疫しサイトカイン応答を解析した結果、VAL-7についてはシストソミュラ粗抗原刺激時にIFNγの二次応答が観察されたが、VAL-12では観察されなかった。 [考察]発育段階別発現プロファイルの異なるVAL分子について、クローニングや組換えタンパクの作成に成功した。住血吸虫の体内侵入時(セルカリア)および移行時(シストソミュラ)に発現しているVAL-7に対して、感染防御的な免疫応答(Th1応答)が起こったことより、ワクチン候補分子となる可能性が示唆された。
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