研究概要 |
[背景と目的]分泌タンパクを仲立ちとした宿主寄生体相互作用に注目し、その機能が未だ不明であり多くのパラログをもつCRISP/SCP/Tpx-1/PR-1分子(住血吸虫においてはVAL)を材料として、ワクチンとしての可能性の検討および分子機能の解明を目的として研究を行っている。昨年度は、代表的なVAL分子(VAL-3,5,7,9,12,15)の発現プロファイルの解析とクローニングを試み、クローニングに成功した分子の一部について組換えタンパク封入体を作成しマウスでの免疫応答の解析を行った。その結果、セルカリアやシストソミュラで発現している分子VAL-7では、封入体免疫マウスのリンパ球をシストソミュラ粗抗原で刺激した時にIFNγの二次応答が観察され、適切な免疫法を用いればワクチン効果を示す可能性が示唆された。本年度は、残りの分子について組換え蛋白の発現を試みた。[方法]VAL-7以外に、虫卵で主に発現しているVAL-3,5,9,15、成虫で発現しているVAL-12のインサートをそれぞれTAベクターから大腸菌発現ベクター(可溶化発現に適しているといわれるpColdTFおよび通常のHisタグベクターpET15b)にサブクローニングを行い、それぞれについて発現条件を検討した。[結果]pColdTFを導入した大腸菌でコールドショック発現を試みたところ、すべてのVAL分子について融合タンパクの発現が認められたが、可溶性分画への発現は認められなかった。pET15bの場合、VAL-3,7,9,12についてはIPTG誘導による強い発現が認められたが、同様にすべて不溶性であった。[考察]大腸菌を用いた系ではVAL分子の可溶性分画への発現が困難であったことから、今後は真核生物系による発現および抗体を用いた解析を行う必要があると考えられる。
|