研究課題/領域番号 |
20590435
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
金澤 保 産業医科大学, 医学部, 教授 (10194888)
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研究分担者 |
長田 良雄 産業医科大学, 医学部, 准教授 (80282515)
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キーワード | 感染症 / CRISP/SCP/Tpx-1/PR-1 / 免疫回避 / 寄生虫 / 分泌タンパク / ワクチン / サイトカイン / 住血吸虫 |
研究概要 |
[背景と目的]分泌タンパクを仲立ちとした宿主寄生体相互作用に注目し、その機能が未だ不明であり多くのパラログをもつCRISP/SCP/Tpx-1/PR-1分子(マンソン住血吸虫においてはVAL)を材料として、ワクチンとしての可能性の検討および分子機能の解明を目的として研究を行っている。昨年度までにHis-tagベクターpET15bにサブクローニングした分子のうち、VAL-3およびVAL-9(虫卵で発現)・VAL-7(セルカリア、シストソミュラで発現)・VAL-12(成虫で発現)について大腸菌組換えタンパクにおいて強い発現が認められたが、いずれも封入体となり可溶性分画への発現は成功しなかった。本年度は封入体の巻き戻し条件の検討および巻き戻したタンパクを用いた解析を試みた。[結果]Novagen社製iFOLDキットを用い、巻き戻しの条件検討を行った。封入体を塩酸グアニジンで変性し希釈法にて巻戻しを試みた結果、VAL-3のみ、アルギニン・EDTA・GSH/GSSG存在下において巻き戻しに成功した。VAL-3の溶媒をPBSに置換し、ポリミキシンB添加下でマウスの免疫細胞に対する影響を検討した。その結果VAL-3は、マウス脾細胞からの抗CD3抗体刺激によるIL-10産生を増強した。また、ELISAによってマンソン住血吸虫感染マウス血清との反応性を検討した結果、虫卵産生期(感染9週)の血清においてVAL-3に対するIgG抗体およびIgE抗体を検出した。[考察]VAL-3は虫卵特異的に発現する分泌タンパクであることと考え併せると、虫卵の免疫修飾機能の一部を担っている可能性が示された。この知見に関してはさらに真核発現系での組換えタンパクや虫卵から精製したタンパクでの確認が必要である。また、感染マウスで特異的IgGやIgEが産生されていることより、免疫診断用の抗原としての可能性も示唆された。
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